ペテロ第一 3章15節は、世界中のクリスチャンに深く響く力強い聖句です。この聖句は、信者たちに内なる献身と外への備えのある生活を求め、「キリストを主として聖とする」こと、そして自分たちが抱く希望の理由を説明する備えをするように促しています。信仰に対する懐疑心や反対がしばしば見られる世界において、この聖句は、キリスト教信仰を誠実に、そして効果的に生き、分かち合うための時代を超えた導きを与えてくれます。
ペテロ第一 3章15節の重要性を十分に理解するためには、その背景を理解することが不可欠です。使徒ペテロは、この手紙を小アジア（現代のトルコを含む地域）に散らばっていた初期のクリスチャンに宛てて書きました。これらの信者たちは、信仰のために様々な試練と迫害に直面していました。ペテロの手紙は、苦しみの中で堅く立ち、正しく生き、希望を持ち続けるように彼らを励ますことを目的としています。第3章は特に、反対に直面したときのクリスチャンの行動を取り上げ、服従、忍耐、そして不当な扱いを受けても善を行うというテーマを強調しています。15節は、このような背景の中で、敵意のある世界を生き抜きながら、キリスト教徒としてのアイデンティティに忠実であり続けるための重要な教えとして現れます。
「あなたがたの心の中で、キリストを主として聖としなさい」
この最初のフレーズは、私たちの注意を内へと向けさせます。「心」は、聖書的な理解においては、単なる感情の座ではなく、私たちの存在の中核、つまり、私たちの知性、意志、愛情を含むものです。「心の中でキリストを主として聖とする」とは、キリストを聖なる方として区別し、私たちの生活のあらゆる側面において、キリストの至上の権威と主権を認めることを意味します。これは受動的な承認ではなく、積極的で継続的な献身です。それは、旧約聖書における神を聖とする呼びかけを反映しており、イザヤ書8章13節に見られるように、七十人訳聖書やペテロの手紙においてキリストに適用されています。この内的な聖化は、私たちの動機と行動を形作るため、最も重要です。キリストが本当に私たちの心の主であるとき、私たちの生活は、困難な状況においても、自然にキリストの価値観と人格を反映します。この内なる畏敬の念が、私たちの外への証しの基礎となるのです。
「あなたがたのうちにある希望について理由を尋ねるすべての人に、いつでも弁明できるよう備えていなさい」
聖句のこの第二の部分は、焦点を外へと移し、私たちの信仰を明確に表現する備えを強調しています。「弁明」（ギリシャ語：アポロギア）という言葉は重要です。それは、防御的または攻撃的になることではなく、法廷での法的弁護のように、道理にかなった首尾一貫した説明を提供することです。これは、信者が自分の信仰について思慮深く、知識を持ち、そして「希望の理由」を説明できるべきであることを意味します。この「希望」は、希望的観測ではなく、イエス・キリストの復活と永遠の命の約束に根ざした確信です。それは、救い、神との和解、そしてキリストにおいて確保された未来への希望です。「いつでも備えている」とは、正式な議論のためだけでなく、日常の会話のためにも、継続的な備えの姿勢を示唆しています。私たちは、自分の信仰に対する深い理解を培い、誠実な質問によって促された機会が訪れたときに、理解しやすい言葉でそれを分かち合う準備をするべきです。
「しかし、柔和と尊敬をもって答えなさい」
重要なことに、ペテロは私たちの希望を弁明するという呼びかけに、重要な限定句を追加します。「柔和と尊敬をもって」です。これは、私たちが他人と関わる方法、特に私たちの信仰について話し合う際に、どのように関わるべきかを語っています。柔和さ（ギリシャ語：プラウテース）と尊敬は、キリスト教的人格の証であり、キリストご自身の謙虚さと憐れみを反映しています（マタイ11:29）。信仰を弁明することは、議論に勝つことや知的優位性を証明することではありません。それは、愛をもって真理を分かち合うことです。柔和さは、私たちの熱意を謙虚さで和らげ、傲慢さや厳しさを防ぎます。尊敬は、私たちに反対する人でさえ、すべての人が本来持っている尊厳を認めます。このアプローチは、効果的な証しのために不可欠です。厳しく、または無礼な態度をとると、どんなに理路整然とした弁明であっても損なう可能性があります。柔和と尊敬をもって答えることによって、私たちは真の対話が可能になる環境を作り出し、心が希望のメッセージに開かれるようにすることができます。
ペテロ第一 3章15節は、単に知的な準備への呼びかけではありません。それは、キリスト教的な生き方への包括的な呼びかけです。それは、内的な聖化、つまり、私たちの心の中でキリストの主権を認めることから始まり、それが自然に外へと溢れ出し、私たちの希望を明確に表現する備えとなります。しかし、この表現は常に柔和さと尊敬によって特徴づけられなければなりません。ますます多様化し、時にはキリスト教の信念に敵対的な世界において、この聖句は依然として非常に重要です。それは、信者がキリストとの深く個人的な関係を育み、自分の信仰を深く理解し、謙虚さと恵みをもってそれを分かち合うように励まします。ペテロ第一 3章15節を生きることによって、私たちはキリストの効果的な証人となり、力や議論好きを通してではなく、キリストによって聖とされた人生の静かな力と、柔和と尊敬をもって提供される証を通して、他の人々をキリストに見出される希望へと引き寄せることができます。
